- 2023年10月24日
睡眠を科学する
10月13日金曜日、久留米市で開催された健康保険委員研修会に参加し、健康保険料率の仕組み、健康保険料率の上昇を抑制するための取り組み、健康保険給付金について学んで参りました。
その合間で、九州大学芸術工学部芸術工学科 助教でいらっしゃる先生のご講演 “睡眠を科学する:睡眠負債とは” を拝聴。
かかりつけの皆さんにも知っていただきたい内容でしたので、共有したいと思います😊
さて、問題です! 日本人の平均睡眠時間は世界第何位の短さでしょう?(2022年時点)
なんと、世界第一位の短さとのことでした。 皆さん、睡眠は取れていますか?
睡眠不足による経済損失
睡眠学会調べでは、睡眠不足による生産性低下で約3兆円。 欠勤、遅刻、早退、交通事故や産業事故などで約5,000億円。 医療費も加えると、経済損失は日本全体で年間5兆円にものぼるとのお話でした。
睡眠不足で運転することの危険性
睡眠不足 VS アルコール →オーストラリアの研究では、一晩の徹夜は、血中アルコール高度0.07% (日本の酒気帯び運転は0.03%で一発免停になります) の酩酊レベルまでテストスコアが低下することがわかり、寝不足で運転することは飲酒運転と同じくらい危険であると示唆されてます。
徹夜運転は怖い →深夜トラック運転手に電極を装着して脳波を測定するという実験では、20人中11名が10~12時間の運転中に6分以上の居眠を確認。
睡眠負債(sleep debt)
日本では2017年に新語・流行語にトップテン入りし注目された睡眠負債という言葉ですが、欧米では1990年代に睡眠障害が注目され、睡眠障害についての早期発見・早期治療を促す活動が展開されています。
本来7時間睡眠を取る人が5時間しか睡眠を取らず (毎日2時間の睡眠不足) 連日過ごした場合、2時間が積み重なっていき(蓄積する睡眠不足を借金に例えて) 睡眠負債になります。(睡眠不足1日だけだと負債にはなりません) 睡眠不足が毎日重なり慢性化すると、睡眠負債の状態になります。
睡眠負債がリスク要因となるもの
- 寿命
- パフォーマンスの低下(前頭葉の機能が落ちる:計算・注意力・集中力・判断力・思考など)
- 心臓血管系疾患
- 脳卒中
- 肥満・糖尿病
- 認知症
- 気分調節
- 人間関係の悪化
週末の寝溜めでは負債は返せない:休日の夜更かし朝寝坊で時差ボケに
寝溜めをすればいいのではと考えがちですが、休日に朝日を浴びないことで、体内時計が遅れて時差ボケと同じ状態になるそうです。 平日は早寝早起き、休日は遅寝遅起きだと最大で約4時間程度の時差ボケと同じ状態になってしまい、それは子供でも問題になっており、心身の健康や成績にも影響してるとのことでした。
光は視交叉上核 (睡眠と行動や内分泌等の生理的現象の概日リズムを支配する最高位中枢で約4万5000個の神経細胞が集まり神経核を形成している場所) に作用し、体内時計の針を遅らせたり早めたりしおり、夜に青い光や強い光を浴びると体内時計が遅れ、朝に同様の光を浴びると体内時計が早まるとのこと。
睡眠負債は自覚することが難しい
慢性的な睡眠不足に陥った際、課題パフォーマンスは落ち続けるにもかかわらず、主観的には慣れが生じて眠気を感じにくくなり、自分では気づけないことが睡眠負債が慢性化する原因になる。
睡眠時間は家賃のようなもの
生きていれば毎日かかる固定費(睡眠)。 短時間でスッキリ健康、という都合のいい方法はない。 寝不足で困ってることがなければ生活習慣を無理に変える必要はないですが、過度の睡眠負債は寿命に対する借金と認識するといいかも・・・とのお話でした。