• 2024年6月11日

教えて!ドクター Q&A   

昨年の秋から西日本新聞の『教えてドクターQ&A』のご質問にお答えしています。

今日はその中から2つ掲載された記事をご紹介します。

Q 64歳の女性です。膝が痛くて病院を受診したところ変形性膝関節症と診断されました。手術しなくて済む方法がありますか?

A 変形性膝関節症の治療では、手術以外にやれることがたくさんあります。まず、下肢の筋力強化訓練やストレッチなどの適切なリハビリテーション療法は、継続することで長期的な効果が期待できます。そして、サポーターや靴に入れる治療用の足底板を装着すると膝への負担が軽減できます。もちろん、薬物療法も日進月歩で、人間に本来備わっている「痛みを抑える力」を賦活化する内服薬や、痛み止め成分の濃度が高い湿布といった選択肢が増えてきました。加えて、ヒアルロン酸の関節内注射も有効です。もし関節内に滑液が貯溜していたら、そこには軟骨や半月板の破片の他、炎症を引き起こす悪い因子が含まれているため、注射の前にできる限り抜く方が良いでしょう。これから種々の治療法の中からそれぞれの患者さんに適した方法を一緒に選んで組み合わせていくと、重症度や活動性等にもよりますが、大半の患者さんは手術までに至らずに済みます。

Q 16歳の息子がサッカーで膝を受傷し、前十字靭帯断裂と診断されました。今後どのような治療をしていくのでしょうか。

A 膝関節の前十字靭帯は自己修復能が乏しく、断裂した場合、手術をしないと半月板や関節軟骨が傷んで将来的に変形性膝関節症を発症するため、スポーツ活動の意欲がある若年の患者さんには手術が強く推奨されます。受傷直後はギプスシーネや装具で外固定し、その後のリハビリテーションで可動域が獲得されれば手術のタイミングです。手術では関節鏡視下に患者さん自身のハムストリングス腱や骨付き膝蓋腱を自家移植する再建術を行い、半月板損傷合併に対しては縫合術などの処置を追加します。術後はスポーツ復帰に向けて、手術した膝関節の状態、健側を含めた下肢筋力、そして全身的なスポーツ活動能力を、医師、理学療法士、アスレティックトレーナーが評価し、患者さん本人、ご家族や競技指導者と共有しながら徐々に活動性を高めるリハビリテーションを進めていきます。手術してからスポーツに復帰する時期は6ヶ月~1年が目安ですが、早期だと再断裂のリスクが高まるため注意が必要です。

院長

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